読書

ねじの回転 / デイジー・ミラー

実は初めて読む。私は、ヘンリー・ジェイムスは『鳩の翼』で良いという気がする。つまり、『鳩の翼』で示された以上のものが、ここにあるのかといえば、ないのではないか。というのは、なんだか理不尽な評価だが(なにせ、むろん、『デイジー・ミラー』や『…

大乗仏教について――中国の草木成仏論と日本での発展

PP.170-171 中国における草木成仏の論拠は、衆生と草木の相互関連性、あるいは「空」の絶対の立場からみた両者の同質性に求められている。(中略) あるいは、仏の絶対の立場からみると、全世界が平等に真理そのものであって、そこでは衆生と草木との区別も…

大乗仏教について――本覚思想

P.158 すなわち、衆生のありのままの現実がそのまま悟りの現れであり、それとは別に求めるべき悟りはない、というのである。それゆえ、もはや悟りを求めて修行する必要はなく、修業によって悟りを求めようとする立場は始覚門とよばれて、低次元の考え方とさ…

大乗仏教について――密教2(顕教との峻別)

PP.109-110 密教の絶対者大日如来は永遠の宇宙的実体であり、それまでの仏教の仏が究極的には空に帰するのと根本的に異なっている。瞑想のなかで自我がこの宇宙的な大日如来と一体化することにより、自我も絶対性を獲得できるというのである。

大乗仏教について――法華経と密教1

PP.77-80 智邈は『法華経』を前半部と後半部に二分する。(中略)そして、前半を迹門、後半を本門と名づける。迹門・本門の区別は仏身に関するところから来ており、本来の永遠のブッダの説いた後半部分が本門であるのに対して、前半部分はその本仏から垂迹し…

文字について

P.31 文字という問題を考えるときに、どうしても押さえておかねばならないのは、「文字は言葉とともにある」「言葉を離れて文字はない」――これが文字を考えるときの大前提である。 P.69 もし、漢字を文字と定義するならば、ひらがなやアルファベットは文字で…

読書感想文

とりあえず最近読んだ本を列挙(するだけ)。森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)作者: H.D.ソロー,Henry David Thoreau,飯田実出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1995/09/18メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 66回この商品を含むブログ (54件) を見る森…

村上春樹は如何にして「話す」か

むろん,村上春樹氏が「始めに」で書いている. そういう意味ではこれは一般的な意味でのインタビューでもないし,いわゆる「有名人同士」の対談みたいなものでもない.僕がここに求めていたのはーーというか,途中からはっきり求めるようになったのはーー心…

日記

気温19.3度、湿度52%、気圧1016.6Pa、晴れ。 仕事。朝から風が強い。仕事帰りに中華料理。 昨夜のscholaは録画してすぐにみた。教授と山下洋輔さんのMy foolish Heartは最高だった。そして次回予告ではYMOが。 今日のNHK杯は録画した。なにせ、有吉道夫 九…

日記

気温19.6度、湿度36%、気圧1015.6Pa、晴れ。 仕事。忙しくはない。帰りに『松浦弥太郎の仕事術』を買い、読む。こういう本は基本的に中の写真で購入するか判断する。つまり、内容はよく読んでいない。人の部屋をみるのが好きというほんの少し変態趣味。 昨…

日記

気温17.0度、湿度31%、気圧1018.6Pa、晴れ。 休み。久しぶりに暖かい一日。とはいえ、今日は一日中家に引きこもる。プレーンタモリをレシピをあまり確認しないで作ったら、トマトの量が多すぎてミネストローネみたいになる。そもそも材料があまりないので仕…

1Q84 BOOK3雑感

『1Q84』雑感のつづき。 BOOK3ではリーダーの予言に多少の変更が加えられた。これにより、プロットも天吾の内面的ドラマ≒小説内小説の世界から逸脱し、青豆との再会という「猫の街」からの帰還を成し遂げる方向に進む。

『1Q84』雑感

話題になっているものからはできるだけ遠ざかる習慣は昔からだし、今だって同じだけれど、こと『1Q84』に関しては微妙な時期に読んだと思う。 ストーリー解説に神経は使いたくない。ただ面倒。また、これから述べることに対しての「説明の説明」のようなもの…

文庫本を狙え!

坪内祐三さんの『文庫本を狙え!』(晶文社)を読んだ。書評の妙を存分にあじわえる作品だとおもう。 書評に限らず、批評というのは、作者なり読者なりの「痛い」ところをつかなければ、たんにAmazonのレビューにとどまる。しかもそれは、ただの批判を指すの…

断片

風邪を引いてしまった。朝起きてコーヒーを飲んでいても、コーヒーの味がしっくりこない。風邪薬を飲んだら昼間に眠気が襲って参った。口の中は口内炎ができて、鼻水、咳がとまらない。しかし食欲はある。朝:おにぎり、昼:豚キムチ丼、夜:おにぎりとサラダと…

断片

本州では春だなんだと言っているが、北海道札幌市は今日も雪が降った。さいきんは最高気温が10℃だったりと、わりに落ち着いた天気だったのに、やっぱりこうなるわけ。下手したら4月にも降るよ。凄く理不尽で差別されているみたいな気分になる。と、大げさに…

断片

もはや皆さんご存知だろうが、ここ札幌は大荒れ。朝外に出、昼に外を見、夕方に帰る、という三度の外出で、景色が一変するダイナミックさに圧倒された。とか紋切り型のことを書いてますが、本当なんですって。 貧血がヒドい。座りながらのびたら貧血になるし…

買い物と感想2 『不完全性定理 数学的体系のあゆみ』

小飼弾さんが絶賛していたので読んでいる。数学は好きだけれど、高校のころ式を覚えさせれてばかばかしくなり、それ以来一切触れなくなったら、今になって小学生程度の計算(分数とか割り算とか)までつまずくようになった。そんな僕が読んでも面白いと思う…

『チェーホフの手帖』アントン・チェーホフ著 神西清訳(新潮文庫)

われわれは卑屈と偽善とでへとへとになっている。 Nは或る病気の研究、その病原菌の研究に一生のあいだ苦闘した。彼はこの闘いに生涯を捧げ、あらん限りの力を尽くした。ようやく死期が迫ったころ突然、この病気は決して伝染するものではなく、ちっとも危険…

読んだ本リスト

全然把握しきれてないのだけれど、まあ思いついたのだけでも。 『白洲正子自伝』(新潮文庫) 『いまなぜ青山二郎なのか』白洲正子(新潮文庫) 『遊鬼』白洲正子(新潮文庫) 『考へるヒント』小林秀雄(実家にあった古本なので出版社失念) 『風の男 白洲…

山本七平『小林秀雄の流儀』(新潮文庫)

では思索をするにはどうしたらいいか。「一身一頭で、二生を経る」ことだ。これは世の中が変らなくても変りはない。小林秀雄は徹底した一身一頭人間だ。そして一身一頭人間になってはじめて対象を「見る」ことができる。思索とは「見る」ことだが、右の頭が…

古今亭志ん生『なめくじ艦隊』(ちくま文庫)

だから、この世界で生きぬくためには、一にも二にも辛棒ですナ。そして自分の腕をみがくこと、これ以外はないんです。 引用の前後には、志ん生が強情で引き立ててもらおうという気がなく、先輩やらにおべっかを使わなかったということが書かれていた。 ただ…

色川武大『うらおもて人生録』(新潮文庫)

まずは誠意から始まること 「大勢を好きになることで、自分の感性の枠を拡げる」こと 運をロスしないこと 守備は実力でやり、運を使わぬこと 「大負け越しになるような負け星を避けていく」こと 「九勝六敗ぐらいの星をいつもあげる」こと 「フォーム」を崩…

美食家の憂鬱からはなれて

世界は、無知で純粋な者に平和が訪れるように出来ている。その道の「通」とか、専門家とかは、むしろ不幸な存在であって、知るということは満足できないということだからだ。だから、「美食家の憂鬱」とはまさしくこのことを指しているわけだが、池波正太郎…

日記

晴れ。昨日は雨の予報だったのに。 フランソワーズ・サガンをはじめて読んだのはいつなのか、まったく思い出せない。今から三年前に亡くなって、日本の新聞各社はとりあえずは騒いでみた。それっきり彼女の作品について言及する人を見かけないが、こんにちの…

日記

そろそろ日記モードに突入しないと、有料オプションの持ち腐れになってしまう。 晴れのち雨。夜の九時ごろから降り出した。明日は雨だそうだ。 今日の朝まで風邪を引いていた。解熱剤で熱を下げた。 現在、白洲夫妻ブーム。白洲次郎は吉田茂の懐刀として、白…

アマチュアとカースト制

言語学におけるガリレオ的な変革者として名高いノーム・チョムスキーは、9.11以降、日本人にもひろく知られるようになってきた。それは、彼が、本領である言語学のみならず、社会問題について強烈なまでの言論活動を行っていることが知られてきたためだろう…

自意識は自意識によって征服されるか?

阿部和重氏のデビュー作『アメリカの夜』を再読。自意識の小説、と呼ぶことが、もし不正確でないのであれば、この小説は自意識を描いて成功しているといえるし、また、自意識を突き詰めればオーソドックスなところにどうしても回帰してしまうという意味で、…

『ボヴァリー夫人』第一部p.31

ある日、三時ごろに訪ねて行った。みんな畑に出ていた。彼は台所にはいったが、すぐはエマの姿に気がつかなかった。窓びさしがしめてあった。板の隙間をもれて陽の光が細長い線を石畳の上に引き、なおその光が家具の角にあたってくだけ、天井にふるえていた…

マリー・ンディアイを覚えたかい?

帯紙の裏の紹介では、 「セネガルとフランスの混血作家、ロブ=グリエ、ル・クレジオらが絶賛するフランス現代文学の旗手マリー・ンディアイ、本邦初訳。サスペンス溢れる眩暈の世界、リアルな奇想、微細な心理描写と酷薄なユーモア、そして悪夢の果てに訪れ…