文字について

日本の文字―「無声の思考」の封印を解く (ちくま新書)
P.31

文字という問題を考えるときに、どうしても押さえておかねばならないのは、「文字は言葉とともにある」「言葉を離れて文字はない」――これが文字を考えるときの大前提である。

P.69

もし、漢字を文字と定義するならば、ひらがなやアルファベットは文字ではない。逆に、ひらがなやアルファベットを文字と定義するならば、漢字は文字ではないとの結論に至る。
言いかえれば、漢字のように「意義」までをそなえたものを「文字」だと定義するならば、「r」や「あ」は「文字」ではない。逆に、「r」や「あ」が「文字」だとするならば、「雨」のように意味を有するまでに機能が高まった存在は「文字」を超えている、ということになる。

それでは、漢字において、アルファベットの「r」やひらがなの「あ」のように語を構成する単位に相当するものは何か? それはヨコ画やタテ画、左ハライや右ハライ、転折などの、一字を形づくる点画や部首である。

目から鱗。面白く、納得させられるが、実際のアカデミックな研究ではどうなのかは分からない。PP.124-125では、昔の本で同様の主張をしている人がいて、「深く考えさえすれば、誰もが自然に行き着く考えなのである」と述べている。いずれにせよ、著書のこの主張が基軸となって以降は展開する。