「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想

  • ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.【初回限定版】 [Blu-ray]
  • 珍しいことだが、あれこれ考えずに観てしまった。面白かった。
  • エンターテイメントとして、伏線とその回収、戦闘と日常の緩急、プロットの明快さという点で、テレビアニメ版よりも「優れている」。と思う。もちろん、作画だのなんだの、そのへんのことはよく分からないけれど、きっとすごくなったんだろう。
  • 「優れている」と鍵括弧を使ったのは、そうした分かりやすさのために、優れているとは思えない点があるからだ。テレビ版での錯綜した物語は、庵野監督を初めとするスタッフ間の解釈の違いが齎した、ということらしい。とはいえ、結果的に人物たちの陰影をくっきりと際立たせるのに成功していた。たとえば、シンジの求めるもの。父親からの承認、性欲、他者との交歓と拒絶、その他その他、は、呪詛ともいうべき頻度で折り重なっては昇華されずに残り続けた。テレビ版最終2話の「無理矢理さ」は、その意味で当然の帰結であって、ああなるしかなかったのだと考えるべきだろう。
  • 本作でもそうした陰影は過不足なく描かれている。ただ、それはもはや呪いではなくなった。理由は書かなくとも観た人ならば分かっていただけるものと思う。あのときの熱狂的な視聴者は、呪われていたが、新劇場版の観客は果たして呪われるだろうか。