ショコラ

• 『ショコラ』（ラッセ・ハルストレム監督作品）は良く出来た映画だ。
• まずなにより上手い。冒頭からして、まるでゲームのようなアングルを駆使し、因習にとらわれた村をキッチュにみせる。そこに北風とともにあらわれた親子が、不思議で魅力的なチョコレートを売るという。そのチョコレートは、セックスレスの夫婦を情熱的にするし、へそ曲がりな老女を素直にするし、断食期に食べてしまうし、と、村の因習を一掃してしまいそうになる。それに対し、従来の規律を真面目に貫き通して人びとの手本となるように生きてきた、この村の村長でもあるレノ伯爵は、親子を追い出そうと様々に画策する。キリスト教的価値と近代以降の人間的価値（自由と幸福）の対立を、これまた「分かりやすく」描いてみせる。また、物語を広げて畳むという基本的な技術が確実に成し遂げられているおかげで、その対立もきちんと昇華されるわけだ。
• あくまでキッチュに、「分かりやすく」、しかし確実に人間を描いてみせる監督の腕が冴えている作品だった。