エリザベス:ゴールデン・エイジ

nombre2008-03-09

  • 『エリザベス:ゴールデン・エイジ』シェカール・カプール監督作品、ケイト・ブランシェット主演。10年前の同監督同スタッフによる『エリザベス』の続編である。
  • 素晴らしいエンターテインメント大作だと思った。きちんと作られていて、職人的な完成度の高さは観ていて不安を感じさせることがない。不満があるとすれば、どれも手を抜かず作り上げているのだから、長回しで撮れば良かったのに(アングルも通俗的に流れる向きはある)とおもう点と、スペインとの海戦シーン(アルマダの海戦)の迫力のなさの二つ。特に後者はエンターテインメントとして致命的で、ほぼ焼き討ち船のシーンで占められるが(そしてそれが史実的にも決定的な勝因なのだが)、今までの苦悩があったぶん、カタルシスに欠ける。
  • しかしながら、このような欠点を抱えながらもなお素晴らしいとおものは、やはり衣装と、迫真の演技をみせる主演のケイト・ブランシェットのおかげだ。本作品では、女王としての威厳よりも、ひとりの女が国家を背負い、宗教、異性、友情に揺れ動くさまを描いた面が強い。したがって前半から中盤にいたるまで、いわば個人の内面を描くことになるのだが、この演技が実に素晴らしいのである。ともすると、出る映画を間違えたのではという皮肉も聞こえてきそうだが、それは監督にいうべき文句だろう。
  • むろん、映画批評家の前田有一氏が述べているように、「徹底してエリザベスに注力した分、そのほかに魅力的な人物は登場しない。メアリー・スチュワートでさえ影が薄い。歴史でなく人物に興味を持つ人に向けたつくりの映画だから、この点にも不満が残る」のは当然だとおもう。ただ、他の人物を魅力的に描くとなると、尺に収まらないという現実的な問題が出てくる。中途半端に描くよりは、思い切って捨てたのだろうと私は好意的に解釈している。