潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る

  • 映画『潜水服は蝶の夢を見る』の監督、ジュリアン・シュナーベルは新表現主義の画家としても著明である。私は美術には門外漢であるのでくわしくは知らないが、この作品に関しては、とにもかくにも「きれい」と表現するのが妥当だろう。しかしながら、むろん「きれい」にはちがいないものの、私は少し変なところで感心していた。
  • 私の映画の見方はちょっと偏屈で、欲望の捉え方という点がいちばん重要だと考えている。むしろ、欲望のない映画は認めないというのが本音で、その点においても本作品は私を満足させた。たとえば想像上の食事のシーンは、見事に食欲と性欲を捉えている。と、いうよりも、食欲と性欲の関係を実に上手く撮っているとおもう。観た直後にレストランとホテルにかけこみたくなる映画は、なにを差し置いても素晴らしいものだ。
  • ところで、物語の中核にあるのは、やはり障害後のリハビリである。リハビリはおもに、理学療法士(PT)と言語療法士(日本では言語聴覚士・ST)によっておこなわれるが、どちらも美人というあたりは、日本で同様の職種を間近でみている私にとっては、複雑な感じがした。むろん、これは冗談で言っているのだけれど。
  • あともうひとつ。本作品では、「感動」とか「涙」とか、そういうものを期待して映画館に行く必要はない。「感動」がないといっている訳ではない。ただ、それだけではもったいないから。