某所での出来事

彼がやったことを理解するには、彼を知らなければならない。彼を知らない人にとっては、当然常識はずれな、とっぴな、馬鹿げた行いにうつるはずだ。事実、彼の行いは愚かだ。だが、私は彼を責める気にはならなかった。彼を知っていたからだ。
ああだこうだ言う人間がいるのは当たり前だろう。それでいいじゃないか。誰かに理解されたくてやったわけではあるまい。ただ周りを面白がらせたかった。照れ隠しもあった。なかば自棄になっていた。これらが彼の気持ちのなかで、どれほどの割合だったかは知らないが。
一昔前は、そういう連中がたくさんいた。自己顕示欲が旺盛で、破滅的な行動をとった。結果、一定の読者と敵をつくった。その様子を周りは面白がりもした。一種のショーとしてみられていたむきもある。下手糞なものが多かったが、それなりに上手くやったものもあった。
私に言われなくても、彼は元気に振る舞っているようだ。まあそうだろうと思う。ただ、私には彼だけではない、別の人のことも目に入っていて、そちらも気にかかっている。が、どうしようもないことなのだろう。