ビリー・ホリデイを学ぶ

ビリー・ホリデイ

ビリー・ホリデイは『Love Songs』しか聴いたことはなくて、それでもやっぱり偉大だと思わずにはいられない。それはおよそ、彼女の人生と対にして考えても、なんら不思議ではない、「声」について、だけれど。

僕が「偉大」だとか、「尊敬」だとかいった言葉を、あまり使わないのは、そうした言葉によって、対象との距離ができてしまうのをおそれるからだ。そういう言葉でまとめてしまえば、簡単だけれど、本当に対象を理解したり見たりすることはできない。だから、ここでビリー・ホリデイについて偉大だと口走ったのは半分失敗で、しかしもう半分は、そうとしか言えない「距離」を、僕は、僕と彼女との間に感じたのだった。
精一杯生き、旺盛に欲と戦い抜いた人間は、やはり魅力がある。けれど、僕の器ではまだまだ無理だなと思う。だからといって、ビリー・ホリデイがまったくの他人として感じられるかと言えばそうではないから困ってしまうのだ。